May I Love it ?(5)
「・・・大したことねぇって。コーヒー、ご馳走さん。」
心配そうな視線を避けるように、じゃあなと立ち上がるが、自分に向けられる視線の強さは変わらない。
尚人の隣は気を遣わなくて楽ではあるが、その分、隠し事が出来なくて困る。
「朋さん・・・。」
「―― チッ、分かった分かった!1時間で切り上げっから!」
飯食いに行こうぜ?と、視線に耐え兼ねた澤田が告げると、尚人は嬉しそうに頬を緩めた。
(やっべぇ、あいつ待ち草臥れてるよな、きっと。)
1時間で切り上げるとは言ったものの―――、丸一日離れていたデスクの上には、連絡事項や処理待ちの書類が山のように積み上がっていた。
山を崩し、急ぐ仕事のみを選り分けて片付けたつもりだったが、それでも予定より1時間以上遅くなってしまっている。
「尚人悪ぃ、遅くなった!......尚人?」
早足で辿り着いた更衣室のドアを、開けると同時に声を掛ける・・・が、返ってくる筈の反応は無い。
(帰っちまったか?いや、それは無いか。)
尚人が澤田との約束を破ったことは、今まで一度として無い。
奥の方にある尚人のロッカーを覗き見ると、壁に寄り掛かるようにして、尚人が眠っていた。
立ち仕事の社員達が足を伸ばして寛げるようにと、更衣室には絨毯が敷かれ、風呂も設置されている。
料飲課にいた頃、仕事が深夜まで及んだときには、澤田も良く更衣室に泊まった。
絨毯の上に転寝するだけのものではあるが、アパートへの往復の時間すらも惜しかったのだ。
「――寝てんのかよ?だから、帰れって言ったのに・・・。」
昨日の土曜日は大安で、ホテルの会場は余すところ無く埋まっていた。
婚礼の出来る大きさの会場は、全て3回転したほどの盛況ぶり。
最後の披露宴が終わり、今日のフェアの会場セットまでをこなした上に、今日は早番で朝食バイキングから出ていたらしい。
きっと睡眠時間は2〜3時間程度だろう。
自分よりも若いとはいえ、疲れていない筈がない。
「お疲れ、尚人。」
呟いて、尚人の頭をやんわりと撫でる。
シャワーでも浴びたのだろう。
セットが取れてサラサラと揺れる髪からは、仄かにシャンプーの香りが漂っていた。
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【May I Love it?】
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│2008/08/09(土)00:00




