僕達だけの天国 (12)
1校時目を終えた辺りで、敦の腹は盛大に空腹を告げていた。
寝坊したせいで朝飯を食べる時間すら無かったのだから、成長期の青少年としては当然の訴えであろう。
「松本ー俺売店行きたい!付き合って!!」
「あぁ?ひとりで行って来いよ、面倒臭ぇー」
ジュース奢れよ、と叫ぶ松本にヤダねと返しながら駆けて行く。
ブツブツ文句を言いながらも、何故か松本はいつも付き合ってくれる。
その事にも何の疑問も抱いていない敦に、後ろを付いて歩く松本は小さく溜息を吐く。
(これじゃあ大沼、報われねぇよなぁ・・・)
2年進級時のクラス編成でクラスが離れた時、松本は秘かに隼弥の呼び出しを受けていた。
夏冬休みの宿題の手伝い提供を散ら付かされて、体よく敦のお守りを押し付けられた。
早い話が、自分の目の届かないところで敦に言い寄ってくる相手を牽制しろ、ということである。
それまでも部活内でのお守りを引き受けていたので、それ位は許容範囲ではあるのだが。
隼弥の想いに全く気付いて無さそうな無邪気な敦を見ていると、隼弥が不憫に思えてくる。
初めてそれに気付いたのは中学に入って直ぐの頃。
松本もまた、自分の性癖がどうも他の友人達とは違う事に悩みを抱いていた時期だった。
いつも無表情で無口な隼弥が、敦といる時だけに見せる表情に驚き、自分には関係の無い陸上部の練習や試合にも豆に足を運ぶ姿に、疑問を感じた。
元来ストレートな性格の松本。
『大沼ってさぁ、高山のこと好きなん?』
何気に口にした言葉に、珍しく表情を崩しうろたえた隼弥に驚愕した。
『あ、いや、誰に言う気もねぇし・・・多分俺、そっちの気があるから気付いただけだと思うし――』
取り乱した隼弥を見るのは初めてで、宥めるついでに、思わず自分の悩みについても漏らしてしまっていた。
そしてその時から、松本と隼弥は互いの秘密を知るたった一人の友人となり、目の前の餌と引き換えに敦のお守りを引き受けて今に至る。
実際隼弥の山はよく当たったし、分かり易くまとまったノートコピーにはかなり助けられている。
勉強なんて二の次三の次の自分が、こうして高校生活を満喫出来ているのも隼弥のおかげと言っても過言じゃないとすら思う。
そんな事を思い出しつつ、売店のパンを真剣な表情で選ぶ敦を呆れ顔で見ていた視線を、ふと動かした時だった。
(あれ?・・・・今の、大沼―――だよな?何で1年のクラスの方から・・・・?)
一年の教室に程近い場所に位置する売店。こんなところに隼弥が足を運ぶ事自体珍しい。
「お待たせーー!」
「げっ・・・バナナオレって・・・お前本当好きだね」
ニコニコ顔でゲットしたパンとドリンクを抱えて戻ってきた敦に、先程過ぎった疑問は意識の外へと押しやられたのだった。
「隼、もう行くの?今日の帰り忘れないで郁の店に寄ってね?法事の打ち合わせするから!」
「分かってる・・・行ってきます」
その日の朝、隼弥は姉の言葉におざなりに返事を返しながら家を出ると、カーテンが引かれたままの敦の部屋を見上げた。
きっと今日は遅刻ギリギリだろうな、そんな事を思って苦く笑いながら視線を逸らす。
もう自分が敦を起こしに行く事もないだろう。
その事が、心に小さな穴を開けていることに気付きつつ、一人学校へ向けて歩を進めた。
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とうとう今年最後の月に突入しましたね〜。
早いなぁ・・・・・J庭用の推敲、思ったより手間取りそうですorz
ブログとして読むのと、本にした場合とじゃ違いますね、やっぱり。
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│2008/12/01(月)00:00




