2008-10-08 00:00 | カテゴリ:【 Café Blessing 】
ジャンル:小説・文学 テーマ:BL小説
(友達、か。―――僕らはもう、友達にも戻れない。)


敦に言われた言葉に、奥底に押し込めている気持ちが湧き上がって来るような気がした。
友達のままでいたのなら、こんな思いをしなくても済んだのだろうか。


  ――― ヴーヴーヴー・・・


カウンターに置いてあった携帯が、メールの着信を告げる。
閉店を前に客足の途絶えた店内に、バイブレーションの震動がやけに大きく響いた気がして、思わずビクリと身を竦めた。
慌ててフリップを開くと、アイツからの短いメールが一通。


『今から部屋に行く。軽く食えんの欲しい。』


その文面に自宅の冷蔵庫の中身を思い浮かべながら、イスの背に掛けていたコートに手を伸ばす。
何処かで諦めてはいたものの、現実を突き付けられた自分が、少し滑稽にすら思える。




   ――金曜は、久々に飲みにでも行くか?
          旭の方が上がり早いんだし、あの店で待ってりゃいい。――



彼にとってのそんな何気無いひと言が、僕にとっては嬉しくて。
木曜までの間必死に残業して、今日は17時の定時と共に退社して来た。

『今上がった。Blessingで待ってる。』

メールを入れたのは、会社のフロアを出てすぐだから・・・今から4時間ほど前。
こんな事はこのところ日常茶飯事で、期待しては裏切られての繰り返し。
敦に言われた言葉にも、反論のしようがなかった。


「永さん、僕帰るね。隼弥君、郁巳(イクミ)さんにもよろしく伝えておいて。」

「あ、はい。気をつけて。」

「バイバーイ、旭さん!まったねーー!」


またいつでも来い、と微笑む永さんの言葉に隠された優しさに、涙が出そうになる。
何とか作り上げた笑顔でそれ応え、敦へ手を振り返しながら扉へと向かう。
外に出た瞬間身を包む寒さに、コートの襟をきつく掻き合わせた。


「――サムッ・・・」


気温のせいだけではない寒さに、ツキンと痛む心を無理やり抑え付けて歩き出す。
仕事の都合で約束を違える、そんな事は、社会に出れば仕方の無いこと。
僕にだって、断りきれない付き合いもある。


仕事のせいだとだけ・・・思えたのなら、良かったのに。


今にも白い花弁が落ちて来そうな空を見上げて、そっと息を吐き出す。
自分の所に来てくれる、それだけでも、幸せなはずだろう?と言い聞かせて。




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