事務所でレジ締めをしている店長へ声を掛け外に出れば、初夏の爽やかな風が髪を揺らしながら通り過ぎて行く。
その心地好さに目を細めて腕を伸ばした片山の後ろから、自分を呼ぶ声がした。
ガードレール脇に停車していた400ccほどの大きさのバイクが、片山の横へゆっくりと並ぶ。
「お前……マジで来たのかよ」
「迎えに来るって言っただろ?」
「言ってたけど、暇なヤツだな……」
フルフェイスのヘルメット、シールドをカチリと押し上げて出来た空間には、居酒屋で片山の動きを止めたあの鋭い眼差しがあった。捕獲者の眼差しが片山を視界に捉え、困惑した表情を映し出していた。
昼間着ていた薄手のジャケットをレジャージャケットへと変えた当真が、そんな片山へとメットをひとつ放って寄越す。
「うわっ! あ、危ねえだろ!」
「乗れよ、飯食い行こうぜ」
思わず受け取ってしまったものの、片山は戸惑いを隠せないままの視線を、ヘルメットと当真とへ交互に巡らせた。
まさか本当に来るとは思ってもいなかった。バイトが終わるまでの時間を待ってまで、どうして自分との時間を持ちたがるのだろうか。
「何やってんだよ? 早く乗れって」
「いや、でも」
「取って食ったりしねえから、さっさとしろ」
「なっ! だ、誰もんな事心配してねえよ! っくしょ、分かったよ、乗れば良いんだろ?」
「ククッ、単純――」
躊躇う片山に掛けられた言葉。態と挑発されている事は分かっているのに、やはり彼からの言葉は何故か、他の友人達のように流す事が出来ない。
渡されたヘルメットを頭から被りバイクの後ろへと跨る片山に、当真が喉奥で秘めた笑いを漏らした。
「あ? 何か言ったか?」
「いや何も。ちゃんと掴っとけよ?」
「ぅ、わぁっ!」
片山が乗った事を確認した当真が、徐にバイクのアクセルを吹かす。思わず両腕で当真の腰にしがみ付けば、チラリとミラー越しに片山を見た当真と視線が絡まる。
一瞬だけ交わったその瞳は優しくて。
思いがけぬ柔らかな視線に、片山の心臓がトクンッと音を立てた。ヘルメットに染み込んだ当真の香りが鼻腔を掠めれば、体温が上昇する気がした。
(ヤベぇ――何だよ、これ……)
走り出したバイクの後ろ、ざわめく心を認めたく無くて。
片山は当真の腰に回した両腕に力を込めた。
20分ほど走っただろうか。
小山の上に作られた展望台まで駆け上がったバイクが、そこでようやくエンジンを切られた。
出だしこそ片山をからかうように飛ばした当真だったが、その後の運転は思っていたよりも慎重で。身体を撫で去って行く風の気持ち良さを感じながらの、なかなか快適なツーリングだった。
「寒くなかったか?」
「ああ、平気。気持ちよかった」
「そのセリフ、どうせならベッドの中で言わせてえな」
「――誰が言うか」
「ははっ、こっちだ、着いて来いよ」
「す、げぇ……」
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ハガキなので本当にSSS(ショートショートストーリー)になるかと
思いますが、元旦をお待ち下さいませね(*´∀`*)
当真はイッキを落とせるか?
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