甘えるように擦り寄る深雪に優しく応える隼弥を、見ていたくなくて。
自分以外を気に掛けて欲しくなくて。
割って入るように隼弥の腕を引き寄せた。
やんわり外されたそれに一瞬心が痛んだけれど、いつもと変わりなく自分の為だけに用意されたノートに、やはり自分達は大丈夫と安心もした。
けれど、どうして隼弥の行動一つに一つに胸がざわつくのか・・・それが何故かが分らない。
去り際にも視線を合わせてくれなかった隼弥の態度が悲しくて、解らない事ばかりが列を成す感情に、敦の頭はパンクしそうだった。
階下でチャイムの音が鳴る。
応じる母親の声の合間に聞こえてくるのは、耳に馴染んだ隼弥の声だった。
「あら、隼くん。敦なら二階に――」
「忘れ物届けに来ただけだから、これ渡しておいて。それと・・・俺、暫く塾には行けないから、それ敦に伝えといてもらいたくて」
自室で息を詰めるようにしながら、母と隼弥の遣り取りに耳を澄ませていた敦は、その言葉に弾かれたようにベッドから身を起こした。
慌てて下へ降りた時には、既に隼弥の姿は無く。母親の呼ぶ声を振り切るようにして外へと飛び出す。
数歩で辿り着く幼馴染の家。
こんなに近くにいるのに、今の敦には隼弥が遠く感じて。
このまま離れて行ってしまいそうな隼弥の行動が怖くて、じっとしてなんていられなかった。
―― ピンポーン!ピンポン、ピンポン!
「隼弥!玄関開けろよ!いるんだろ?隼弥―!」
「うるっせーよ!この、馬鹿!!」
施錠された玄関扉を叩きつつ、しつこい位にチャイムを鳴らす。
怒鳴られたけれど、迷惑そうなしかめっ面ではあったけれど、扉が開いた事にホッとした。
「何だよ?ノートならさっき小母さんに・・・」
「何だよはこっちのセリフだよ!いいから中に入れろって!!」
隼弥の言葉を遮るように怒鳴り散らすと、小さく息を吐いた隼弥が身を引いた。
自室へと向かう隼弥の背を睨み付けるようにして、敦は不機嫌も露わに後に従う。
「で?何だよ――」
「何だよじゃねぇよ!おま、お前、塾行かないって、何で?!」
「あぁ、それは・・さ。――生徒会も忙しいし、試験終わったら法事もあるし・・・」
「それだけじゃねぇだろ?!」
のらりくらりと質問を避けようとする態度にカチンと来た。
相変わらず敦の顔を見ようともせず立ったままの隼弥の両腕を掴むと、敦はその身を揺さ振るようにしながら言葉を続けた。
「だってお前、俺のこと避けてんだろ?何で?俺、俺何かした?なあ、隼弥!」
「避けてるわけじゃ・・・」
「避けてんじゃん!それに、それに俺、お前に好きなやついるのも知らなかった!」
「――放せよ・・・」
「やだっ!なぁ、何で?何で俺には話してくれねぇの?なぁ、隼――っ!?」
詰め寄るうちに涙目になって行くのが自分で分かった。
それでも、胸に感じた痛みをどうにかしたくて、必死で隼弥にしがみ付き続けていた敦の眼に、苦しげに表情を歪めた隼弥の顔が飛び込んでくる。
次の瞬間、敦の発しようとした言葉は、隼弥の唇へと奪われた。
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それを改めて認識できた気がします(ペコリ
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